本当の自分に巡り合うための哲学~理想から遠ざかるルサンチマン~

よく「お金持ちに恨みでもあるのかな?」と思うくらい過剰にお金持ちを否定する人たちがいます。
こうした過剰な反応は、「本当はお金持ちになりたいけど、自分はなれない」という現状に対するストレス・劣等感を「お金持ちは卑しい存在」と立場を引き下げることによって解消しようとする生理現象のようなものです。
このような現象・概念のことをドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェは「ルサンチマン」と名付けました。
今回はこのルサンチマンを抱えてしまった場合の問題点、自分のビジネスや人生への活かし方について述べていきます。
・ルサンチマンを抱えてしまう問題点
・ルサンチマンとうまく付き合っていく方法
ルサンチマンとは
「ルサンチマン」をわかりやすく説明すると、
「弱い立場にあるものが、強い立場にあるものに対して抱く嫉妬や憎悪、劣等感などの感情」
ということになります。
イソップ物語に「酸っぱいブドウ」という話があります。
内容としては、キツネがおいしそうなブドウを見つけますが、どうしても手が届きません。
そのうち、キツネは「そんなブドウはきっと酸っぱくて、とても食べられるものではない」と、立ち去ってしまう物語です。
キツネは、自分が手に入れられないブドウに対して、「酸っぱいから食べられない」と価値を引き下げることによって、自分を納得させます。
ニーチェはこの部分を問題視しています。
なぜなら、我々が持っている本来の価値観や判断基準が、ルサンチマンによってゆがめられる可能性があるからです。
ルサンチマンを抱えてしまう問題点
ルサンチマンを抱えてしまった方は、そのもやもやする感情を鎮めるために、以下の反応を示します。
①ルサンチマンの原因となる価値基準に従属してしまう
②ルサンチマンの原因となる価値基準を転覆させる
それぞれについて細かく見ていきましょう。
①ルサンチマンの原因となる価値基準に従属してしまう
まず一つ目は、ルサンチマンに囚われてしまった人は、そのルサンチマンを生み出す元凶となる価値基準に従属した状態でそれを解消しようとします。
例えば、周りが全員ブランド物の服を身に付けているのに、自分だけ身に付けていない状況だったとしましょう。
その時に、自分は本当はブランドものなんていらないので、周りに合わせないことも可能ですが、多くのひとは、周りと同じようなブランドものを購入することで自分が抱えてしまったルサンチマンを解消しようとします。
そして、ひとたびこうしたループに入ってしまうと、周囲のはやりに合わせて自分の価値観も変化させ、延々とルサンチマンを解消し続ける状態になります。
当然のことながら、このような形でルサンチマンを解消していっても「自分らしく生きる」ということは非常に困難です。
自分が何かを欲した時に、その欲求が「素の自分」による素直な欲求からくるものなのか、あるいは他者によって喚起されたルサンチマンによって沸き上がった欲求なのか見極めることが大切です。
②ルサンチマンの原因となる価値基準を転覆させる
次に、「ルサンチマンの原因となる価値基準を転覆させる」ことの危険性について解説をしていきます。
ニーチェが大きく問題視しているのはこちらになります。
ニーチェの考えによれば、多くの人がルサンチマンを抱えた場合、価値観の変化やアクションによって状況を良くすることを諦めてしまうため、ルサンチマンが沸き起こる原因となる価値基準を転覆させてしまったり、
逆の価値観を主張して、相手の立場を弱め、自分自身を納得させようとします。
実は、このルサンチマンによってキリスト教が生まれたとニーチェは説明しています。
ニーチェによると、古代ローマ時代、ローマ帝国から過酷な支配を受けていたユダヤ人は、貧しさに苦しみつつ、お金と力を持つローマ人をはじめとする支配者をうらやみつつも、憎んでいました。
ですが、現実を変えて、ローマ人より自分たちが優位にたつのは難しいので、ローマ人よりも上での存在である「神」を作りだりだしたというのです。
「ローマ人は豊かで、私たちは貧しい。だが、天国へと連れていってもらえるのは我々だ。富裕層や権力者は神から嫌われており、天国に行くことはできない。」
と、考えることで、ユダヤ人が心理的に優位に立とうと考えたというのがニーチェの主張です。
ルサンチマンの原因となってしまっている劣等感を、チャレンジや努力で解決しようとせずに、劣等感を感じさせる「強い他者」を否定する価値観を生み出すことで、自己肯定をするという考え方です。
現代の日本でもよく聞く話ですね。
自分よりも実力がある人、容姿端麗な人、お金を持っている人を「卑しい」「性格が悪い」と否定することで自己肯定感を守ろうとしているのです。
ルサンチマンが生まれるということは、自分の深層心理では、「本当は自分もそうありたい」と思っていることが多いです。
ですので、劣等感を感じる価値観を否定して、諦めてしまうことは、「本当になりたい自分」から遠ざかることを意味します。
いつまでも何かもの足りないという感覚を持ちながら人生を過ごすことになってしまいます。
ルサンチマンとうまく付き合っていく方法
ルサンチマンに振舞わされて、一時的に劣等感を紛らわすだけの人生を送ってしまうと、本当になりたい自分から遠ざかることはご理解いただけたと思います。
ただ、こうした劣等感を完全に感じないようにするのは、生理現象なのでほぼ不可能といっていいでしょう。
ですので、ルサンチマンを拒絶するのではなく、上手に付き合って自分の人生を良い方向に導く必要があります。
方法としては、以下の2つです。
・ルサンチマンを特別扱いしない
・長所を見つける癖をつけて自己肯定感を高める
それぞれについて解説していきます。
ルサンチマンを特別扱いしない
劣等感を感じてしまう相手の立場を引き下げることによって、ルサンチマンを解消する行為は、「ルサンチマンという不快な感情に耐えきれない故に発生してしまう」一種の生理現象です。
もう少し言えば、劣等感というものに対して「重く捉えすぎ」ということです。
自分が抱えている悩みは自分しか抱えていないと思いがちですが、劣等感などはほとんどの人が抱えるものです。
生まれてから一度も失敗をしたことがない人間がいないように、すべてが完璧な人間なんて100%いないので、誰しもが自分にはない他者の長所を見つけると羨ましいと思います。
ルサンチマンに苦しむ人は、そうした他者の長所をみて、「自分はそれができていないからダメだ」と解釈してしまいます。
重く捉えすぎて耐えきれず、自分⇒他者にその不快な気持ちをぶつけてしまいます。
ですので、ルサンチマンに苦しまないためには、ルサンチマンを特別なものと扱わないことです。
所詮誰にでも起こる生理現象であり、完璧にやれる人間なんてどこにもいないのと、劣等感を抱えることは悪いことではありません。
いきなり「劣等感を抱えた!抱えさせた人を叩かないと!」と脊髄反射的な行動を起こすのではなく、「あ~劣等感感じているなあ。この人みたいになりたいんだな」と他人の生理現象だと思い、冷静かつ客観的に自分を見てみましょう。
最初は難しいかもしれませんが、ルサンチマンを抱える都度一拍おく癖が付けば心穏やかな状態で人生を送ることが可能です。
ビジネスマンなら劣等感が指標となり、自分の理想の実現に尽力できるようになります。
長所を見つける癖をつけて自己肯定感を高める
劣等感を感じやすい=自己肯定感が低いとも言えます。
常に自分の欠点ばかりが気になって、人に会うことに対して潜在的な恐怖すら感じています。
それは、人の欠点を探す癖にもつながってしまうので、コミュニケーションにおける負のスパイラルへと突入してしまいます。
そもそも大半の日本人は無意識に生きていると、欠点の方が気になってしまう生き物です。
ですので、劣等感を苦しまないためには、長所見つけ、自己肯定感を高めましょう。
最初はかなり意識して自分の長所に目を向ける必要があります。
家の中で自分の長所を見つけても、何も考えず外に出るだけで他者の欠点が気になり、それが自分に返ってきてしまいます。
こちらの問題を解決するトレーニングとしてオススメなのが、すれ違う人全員の長所を見つけるゲームをすることです。
歩道、電車内、会社など人がいる場所ならいくらでもトレーニングをする機会があります。
他人の長所を見つけているうちに自分でもできそうなこと、自分にも共通している長所が見つかり、自己肯定感が高まります。
それが習慣化できて、世の中が長所だらけに見えるようになったら、自分の長所を常に感られるようになるはずです。
そうすることで、ルサンチマンに振り回される機会自体を減らしていくことができます。
まとめ
・他者の立場を引き下げて自分のルサンチマンを解消して根本的な解決にならない
・ルサンチマンは誰しも抱えるものなので特別視しない
・長所を見つける癖をつけることでルサンチマンに振りまわれなくなる
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