不動産投資が節税になるという話に注意

こちらの質問について解説していきます。
結論としては、半分正しく、半分間違いです。
ワンルームの不動産営業マンの方はよくこの「サラリーマンでも節税できる」というネタを使って顧客の獲得を狙いますが、正直税金に対する知識はゼロといっても過言ではありません。
実際私の周りのワンルーム不動産の販売に関わっている方の多くは「節税セミナー」と題して、集客をしていますが、おいしいところしか伝えておらず、デメリットの部分に対する解説が全くなされていない状況です。
恐ろしいのが、本人達がそのデメリットについて把握すらできていないことです。
ワンルーム投資での節税における真実についてお伝えしていきます。
✔この記事の内容
・ワンルーム投資での節税の仕組み
・ワンルーム投資での節税メリット
・ワンルーム投資での節税デメリット
ワンルーム投資での節税の仕組み
サラリーマンの方が不動産投資でそもそも節税できるのには、理由があります。
不動産投資には「損益通算」という概念が適用されるからです。
要するに、不動産で利益が出れば確定申告を行うことで、給与所得に利益分が上乗せされて、+αで所得税と住民税が課税され、逆に不動産で赤字が出ると給与所得からマイナス分が引かれて、所得税、住民税の負担が抑えられるというものです。
参照:FP部
ただ、日常のお金を何でもかんでも支出を損益通算に回せるのかというとそうでもなく、サラリーマンの方ができる損益通算の所得は限られています。
損益通算が認められるものとして、
■不動産所得
■事業所得
■山林所得
■譲渡所得
こちらの頭文字をとって「ふじさんじょう」と呼ばれるものが損益通算の対象となります。
不動産所得での赤字を作る仕組み
そんなのただの損じゃん!
入居が付かないような不動産投資なんてわざわざやりたくないですよね。
ワンルーム投資での節税のキモは「きちんと入居を付けた状態で節税する」ということです。
3000万円の新築ワンルームマンション(家賃10万円)を購入した時の例で見てみましょう。
家賃が10万円なので、年間黒字=10万円×12カ月=120万円
こちらが利益として出てしまっている部分です。
不動産投資で赤字として計上できるものは、
①購入時の諸費用(だいたい100万円)
②減価償却費
③ローン返済の利子分
④不動産にかかる税金(固定資産税や不動産取得税など)
⑤雑費
こちらになってきます。
それぞれについてみていくと
①購入時の諸費用
不動産を購入するときには、登録免許税、司法書士報酬、融資手数料、火災保険料などが100万円ほどかかってきます。
ですが、大体その諸費用分も融資を引っ張るので、実質手出しの負担というのはほぼない状態で100万円を経費として計上できます。
②減価償却費
こちらの概念が初心者にとっては分かりづらくて厄介なものになります。
ですが、不動産投資の節税の一番のキモといっても過言でもないのがこの減価償却という概念です。
減価償却費というのは、建物が古くなることによって一定の割合で価値が下がったものとして、その下がった分を経費として計上できるというというものです。
減価償却される割合というのは、建物の構造(法定耐用年数)によって異なります。
例えば、新築RC造(鉄筋コンクリート造)の物件でいうと、法定耐用年数が47年なのでざっくりと一年で1/47ずつ建物の価値が下がっていくという計算です。
建物価格が1500万円なら一年で約30万円の赤字を計上できるということです。
減価償却されていく分というのは、特に自分の手出しのお金がかかるわけではないので、オーナーさんはノーダメージで経費計上をすることができます。
③ローン返済の利子分
不動産のローンを組んだ時の利子部分も経費に組み込むことができます。
ローンの返済に関しては、家賃収入から行うので、元々の手元資金をなるべく使うことなく、経費を計上することが可能になります。
ただし、注意しなければならないのが、不動産投資の収益自体が赤字だった場合、経費に組み込めるのが建物部分の利子に限られるということです。
3000万円のうち建物1500万円、土地1500万円とした場合、建物1500万円の部分の利子だけが経費として組み込まれ、残りの土地部分の1500万円に関しては経費に組み込むことはできなくなります。
このことについて意外と理解していない不動産営業マンも多いです。
④不動産にかかる税金(固定資産税や不動産取得税など)
不動産を持っているだけでかかってくる税金も経費に計上できます。
不動産を取得した時に一度だけかかってくる「不動産取得税」(年10~15万円くらい)
不動産を持っていると毎年かかってくる「固定資産税」(年5~8万円くらい)
主にこの二つを計上していくことになります。
⑤雑費
①~④以外に不動産事業にかかってくる経費は雑費として組み込むことになります。
例えば、不動産のセミナーなどに参加した時にかかってくるセミナー代、喫茶店での不動産業者との打ち合わせにかかってくるような会議費、物件の現地確認などにかかってくる交通費などが経費として計上することができます。
あくまでも不動産事業にかかってくる経費ですので、あまりにも不動産事業からかけ離れたものまで経費にしてしまうと、税法違反になる可能性があるので注意が必要です。
これらの赤字を120万円の黒字と合算することで、不動産における節税を行っていきます。
物件にとって異なってきますが、一年目は100万円以上の経費計上、二年目は50万円前後の経費を計上していくイメージです。
※よく不動産営業で、家賃収入ーローンの返済=赤字だから節税になるという方もいますが、これは間違いです。
もしこんなトークをしている営業マンがいたら完全に知識不足か詐欺師みたいなものなので、関わらないほうが吉です。
ワンルーム投資での節税メリット
ワンルーム節税のメリットに関しては、通常であれば税金対策ができないようなサラリーマンの方が、割と大きな還付を受けることができるということです。
しかも、ローンの返済は家賃収入で行うことで、実質ほとんどお金を使うことなく節税効果を受けることができます。
特に一年目は計上できる経費が大きいので、ワンルーム一軒で人によっては40~50万円ほど税金ほどの還付を受けることができるケースがあります。
さらに言えば、ワンルーム投資自体に節税以外に、生命保険効果や資産形成効果があるので、複数のメリットを同時に享受できるのも魅力です。
ワンルーム投資での節税デメリット
メリットに関してしっかり説明する不動産営業マンは多いですが、実際大切なのはこれからお話しするデメリットの部分です。
こちらの部分をしっかりと話してくれる営業マンから物件は購入したほうが無難でしょう。
①節税効果が大きいのは一年目くらい
一年目は購入時の諸費用を経費組み込むことができるので割と大きく経費が計上できるのですが、二年目になると一気に諸費用分の節税ができなくなります。
諸費用が100万円で、所得税率・住民税率それぞれ10%だとすると、20万円も節税効果が下がります。
こうした事情を説明してくれない不動産営業マンというのは、完全に「自分たちが儲かりさえすればよい」という発想の元動いているだけなので、自分の営業担当にするには不安要素が強すぎます。
②減価償却の計算方法に注意が必要
メリットの部分で解説した減価償却ですが、こちらにも注意が必要です。
減価償却というのは、実は「躯体」と「建物設備」にわけて計上しているケースが多いからです。
この計上方法を「二本出し」といいます。
分かりやすく言うと、躯体というのは建物本体、建物設備はそれ以外の付属の部分です。
減価償却における二つの違いは、耐用年数が異なるということです。
新築RC造の物件であれば、躯体は47年で亜焼却されますが、設備に関しては15年で償却されます。
要するに、15年目まではしっかりと節税効果が望めますが、それ以降は設備分の減価償却ができないので、節税効果が大きく薄まります。
ローン期間の35年間ずっと節税効果の恩恵が受けられると期待してワンルーム投資を始めるのはあまりお勧めできません。
③固定資産税もかかってくる
ワンルーム投資を行ううえで、切っても切り離せないのが「固定資産税」です。
節税効果があるといっても結局不動産を持っていなければかからない固定資産税がかかってくるので、税金がかかってくるデメリットについても十分に注意が必要です。
ワンルーム投資の固定資産税は、大体毎年5~8万円ほどかかってきます。
もし仮に8万円毎年固定資産税がかかってくるとすると、35年間持ち続けた場合のトータルの固定資産税額は、
8万円×35年=280万円
これだけの固定資産税がかかってきます。
長期保有を前提としている場合、本当に節税効果を期待されるのであれば、この280万円よりもおおきく税金が戻ってくるかどうかをシュミレーションしなければなりません。
ただ、大体のサラリーマンの方というのは、固定資産税に負けると思います。
これらが不動産営業マンが話す「節税トークの罠」です。
まとめ
✔ 不動産投資による節税は損益通算によって行われる
✔ 家賃収入をもらいながらの節税は可能だが、長期で効果があるわけではない
✔ 長期のシュミレーションをしての節税効果を検証すべき
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